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電話対応、きちんと社員教育を

更新日2017/05/10

Q.注文者から「トイレの床が水で濡れている。すぐに見に来てくれ」と電話があった。あいにく、その人を担当した者と連絡がうまくとれないが、どうすればよいか。対処法について。

電話A.クレームは、突然電話から始まることが多い。電話に出た人の口のききかた一つで、その後のクレーム解決の難易が決まるといっても過言ではない。

 クレーム対処法の第一原則「迅速な対応」の第一歩である。ユーザーは怒っているから感情的な口調である。そしてかなり気ぜわしい。自分がしゃべっていることは当然理解してくれると思う。たとえ、電話に出た人が事務などの女性であったとしても。

 そこで、まず電話に出た人は、注文者の話をできるだけ詳しく聞く姿勢が大切である。

 質問事項としては、どんな欠陥なのか。それをいつ気がついたのか。お客さんとして、何か自分で対処してみたか。ユーザーの担当者(営業マン)は誰であるのかなどである。できれば、会社としてあらかじめ電話対応マニュアルを作成しておき、誰が対応してもすぐにできるようにしておくことが望ましい。

 もっとも、つまらない質問は、かえってユーザーを怒らせる。例えば、ユーザーの担当者名である。そんなことは、会社として当然知っていると思っているからである。ユーザー名と担当者名はすぐ分かるように表でも作っておくか、パソコンに入力しておくことだ。ユーザーとしては、自分のことを知っていてくれた。担当者もすぐ分かったということだと、まずは安心するからだ。

 しかし、仮にすぐに分からない場合は、やはり尋ねておくべきだ。なぜなら、ユーザーはすぐに担当者に連絡してくれると思っているのに、会社の方で担当者を探しては、万一にもそれに時間がかかってしまっては、ユーザーの怒りは倍増してしまうからだ。

 さて、電話で一通り話が終わったら、すぐに担当者はユーザー宅へ向かうことになる。ところが、担当者が別に用事があって駆けつけられないこともある。

 次回、私が実際に会社から相談を受けた実例をお話しする。今回のまとめとしては、電話での対応について社員教育をきちんとすることをお勧めする。


まず弁護士へ相談できる体制を

更新日2017/04/26

 対処法第六は、弁護士への早期相談である。会社はクレームが始まるとその火を消すことに頭が一杯になり、全体の解決を検討する余裕を失っていることが多い。

弁護士へ相談 今まで述べてきた対処法、すなわち迅速な対応、お客さんへのきちんとした詫び方、担当者の明確な態度、安易な妥協をしない、チームワークの社内体制の確立等をきちんとしていけば、大多数は解決される筈である。しかし、最近注文者側の対応は極めて厳しく、かつ、要求が過大となっている。したがって、見通しを甘く見ていると些細な瑕疵でも解決困難な瑕疵へと拡大していってしまう。そうならないためにも、クレームが発生したらまずは弁護士へ相談できる体制をつくっておくことだ。

 弁護士には問題がねじれたら相談すればよいと思ってる企業が多いが、問題がねじれる前から相談をしていれば冷静な対処方針を指示してくれる可能性が大きい。

 冷静な対処方針というのは和解の落としどころと解決する時の文書の文面である。補修をすることは当然であるが、それだけでは終わらせてもらえない。補修が不十分だったときの将来の責任も問われるかもしれない。多分、その時は過大な負担をすることを認める内容となっているだろう。

 瑕疵の項目が非常に多いとき、それらを一括して解決するときはその旨を明記する必要があるが、不十分である場合もある。注文者側に納得してもらうことに気を使いすぎて、表現が不十分でも、あるいは注文者側に有利な表現でもそれを受け入れてしまう場合が多い。一言弁護士に相談していれば、そのようなときに内容も詰めることができる。

 しかし、相談は注文者との話が決まる前にして欲しい。というのは、注文者との話が決まった後にそれを訂正しようとしてできないことが多いからだ。これは、現在事件が進行中の事例であるが、地耐力不足で基礎にひび割れが生じ、それを解決するため杭を打つことになった。そして再び基礎にひび割れが入ったら立て直す約束をした。それを前提に弁護士に介入を頼み、弁護士も今さら別の案を提案できず、ほぼ同様の和解書面を作成した。

 後日、ひび割れが発生したので、注文者の方で建て替えを要求してきた。和解の時の弁護士は私ではなかったが、私は再度ひび割れは安全に支障はないので、建て替えはできないと主張した。再度のひび割れで建て替えというのは安全性に問題がある場合に限るという意味だが、弁護士が関与しての文面だけに注文者に対する反論は難しい。


チームで対応する社内体制を

更新日2017/04/12

 前回までは、主として対注文者との関連で述べてきた。対処法の第五は、社内体制についてである。クレーム対応の第一責任者は工事担当者であることは当然である。しかし、クレームが発生したら担当者を一人にしないことである。一般的な状況をみると、クレーム処理を担当者一人に押しつける傾向にある。押しつけは絶対に駄目である。むしろサポート役を必ずつけるということでなくてはならない。

チームワーク 営業は一人でもできるが、クレーム処理はチームワークで対応する体制をつくっておく必要がある。注文者宅へ二人以上で行けば、第一に気持ちの上で楽になるはずである。注文者は怒っているし、たいがいの場合、注文者の方も家族とくに夫婦で話をしてくることが多い。

 なぜなら、注文者は夫でも住宅は家族の生活の場であり、不満は家族全員なかんずく、妻が感じていることが多いからである。一人で赴き、夫婦から交互に怒りをぶつけられ、注文を出されたらとても冷静に対応できない。メモをとる余裕もなくなる。

 二人以上で行く第二のメリットは、全体的に柔軟な対応をすることができることである。全体的に柔軟とは、一人が聞き役に徹すれば注文者の怒りを和らげ、苦情の内容を整理することができ、もう一人がとりあえず会社側として可能なことと不可能(拒否回答)なことをきちんと告げることができるからである。

 前に述べたように、注文者に期待を持たせるような回答はすべきではないが、一人で応対していると怒りから逃げるため、早く切り上げたいという心境から、注文者の主張をとりあえず「検討します」と言ってしまいがちだからである。

 例えば、一人がお客さんの注文に応じるかのような言葉を言っても、傍にいる他の者がその人に応じることは難しいのではないかと、口を入れることにより、その場での応諾を避けることができる。

 第三のメリットは、その場での関係者の発言に対する証人役となることができるということである。よくあることだが、話がこじれる原因の一つに、その場で会社側が注文者の注文を応諾したか否かが問題となることがある。

 注文者の中にはその処理にたけていて、その場では確認しなくて、後日、あの日会社側はこの点を認めたのだから、そのことを認める書面にサインをしろ、と迫ってくることがある。一人で行っていると、それを拒む事が難しい。チームで行けば、会社側ではそのような発言をしていないと、明確にすることができる。


安易な妥協は新たな火種に

更新日2017/03/29

 対処法の第四は、安易な妥協はするなということ。今まで述べてきたお客さんとの対応の締めくくりとなるが、早く解決したい、事を大きくしたくない、という消極的判断の下、安易な妥協をする例が沢山ある。実は、安易な妥協は新たな火種になっているのだ。その理由はいくつかある。

火種 一つはお客さん側に自己の主張は正しかったという心理を生ませてしまうことである。本当に正しかったことであればよいが、安易な妥協というのは、お客さん側の過大要求に会社側が目を瞑(つぶ)った結果ということであるから、すべてが正しかったことではない筈である。過大要求に気がつかなければ、次にもまた要求をしたくなるのが人間の心理でもある。つまり、お客さん側としても、正当な要求の限界が分からなくなってしまっているので、一旦は妥協により解決してしまったと思っていても、次なる標的が見つかれば、そこにまた過大要求の目がいってしまうのである。

 二つ目は、次なる要求を拒みにくくしてしまうということである。一旦、腰を引き始めれば、土俵の外(建て替えという最悪な状態)に出されるまで、要求が拡大していく。それを押さえにくくしてしまうのが、始めの安易な妥協だ。

 安易な妥協の中に一番多いのが、金銭解決である。担当者としては、クレーム問題が会社のトップの方に行かないためには、金銭解決が一番てっとり早い。注文者側としては、クレーム解決に金銭は当然と思っている。従って、そこに話がいきやすい。

 ここで、問題なのは金銭解決の基準がお客さんと会社とで大きな開きがあるということだ。お客さんの方では、迷惑料は100万円以下とは考えていないことが多い。すぐ話は大きな金額から始まる可能性がある。クレーム対処の基本は、あくまで瑕疵の補修である。補修に自信がないと金銭に流れてしまう。自分が造ったものをきちんと直す位、自信をもってできなければ駄目だ。

 ある一流の建築会社では「当社は金銭は出せません。きちんとした補修をさせて頂くということでお許し下さい」というのを原則としていると聞いた。大切なのは心構えである。とは言っても金銭の提示をせざるを得ない場合も多々ある。その時は、会社の基準があればその基準以内で、それ以上となりそうな場合は「これ以上では、私では結論が出せません。弁護士等と相談してみます」と言ってなるべく金銭提案は、弁護士等にさせることである。安易な妥協の例はいとまがない位多いが、後日、実例を挙げて検討させて頂く。


はっきりした態度で対応を

更新日2017/03/15

 対処法第三は、第二と基本的に同じであるが、担当者としての態度をはっきりさせるということ。申し訳ないという気持ちが強かったり、お客さんに怒られると怖いと思っていると、自ずとお客さんペースに事が運び、担当者としての考えを伝えることができなくなる。悪気はなくても、注文者としてはクレームに対する対処として過大な要求をしてくることがある。

 その要求に曖昧な対応をすれば、注文者の方では要求を呑んでくれたと思い込む。したがって、できないことはできないとはっきり答えなくてはならない。少なくともその場ではっきりと答えられないことは、曖昧に応じるのではなく「持ち帰って調査した上返答する」と明確に注文者に伝えなければならない。

詫びる その際、なるべく「検討します」という言葉は使わないようにしなければならない。なぜなら、「検討します」という言葉は、日本語では「受け入れる」という風に思われがちだからである。お客さんに期待を持たせるような言葉は使わないようにしなければ駄目である。

 お客さんの言い分を呑む可能性が強いときは「慎重に検討します」と言って、実際よく検討した結果、お客さんの言い分を受け入れればよい。要するに曖昧はよくないということである。また、その場で決定しなければならないときは、注文者からのクレームの対処についても最終的に注文者に決定してもらうということである。その意思表明が会社として呑めないと判断したら、思い切って「お話の内容はよく分かりましたが、当社としては、○○様の要求には応じられません」とはっきり言うこと。「何とかならないか」という要求にも「これ以上は駄目です」ときっぱり言うことである。

 実際にあった話で、会社の代表者が注文者に会いに行くことになったとき、私に基本的な心構えを聞きに来た。そこで、上記のような話をした。代表者がその心構えで注文者に毅然たる態度で拒否回答をしたら、注文者が怒りだし、いきなり襟首を掴まれたそうだ。それでも冷静に対応し、拒否理由を繰り返し述べた。その時は、喧嘩別れのような状態であったが、後日、注文者の方で折れてきたそうだ。そして、その注文者が言うには「社長の毅然たる態度で、かえって得心がいった。これからもよろしく頼む」と言われたそうだ。

 曖昧さはお客さんの方にも曖昧な心理状態を起こさせ、甘い期待を抱かせる。それが実現しなかったら、落胆が大きい。それが不満に繋がることになる。