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ユーザーとの深い絆つくろう

更新日2017/06/21

 ところで、クレーム対処法を営業と思えというのはかなり無理を言っているようである。しかし、「クレームはまず怒られることから始まる」と腹をくくればユーザーの所にいくのも決して嫌とばかりは思わないだろう。

 嫌々行けば、ユーザーの方も担当者をますます追いつめたくなるだろう。人間の心理の不可思議なことは、相手が弱そうと思うといじめたくなる、という意地悪な面をもっていることだろう。怒られて当然と思っていけば、ある程度の堂々とした態度がとれるというものだ。しっかりとユーザーの目を見て話をすることもできる。

 さて、怒られてばかりでは再度足を運べと言われても運びづらい。もちろん、瑕疵があるから呼ばれるので、まずは瑕疵の補修ということで、否応なく何度でもユーザー宅に足を運ぶことになるだろう。それでも、単に補修のためにだけ足を運ぶのと、それを機会にユーザーとさらに深い絆をつくろうという気持ちがあるのとでは、大変な違いだ。

 深い絆をつくる方法は、ユーザーが指摘する瑕疵以外に他に何かユーザーに不満はないか、困っていることはないか、聞き出してくることであろう。ユーザーも住み始めると注文していた時には気づかなかったことが結構出てきて、担当者に聞いてみたいと思っているものである。クレームが処理されたからといって、ユーザーから感謝の言葉などは出てこないが、注文者から色々聞き出してあげれば、心の中では意外と喜んでいる筈である。

心をつかむ サンダース著の「サービスが伝説になる時」という本の中に「苦情を言う人のうち56~70%の人は、苦情が解決された場合、その企業と再び取引したいと考える。その比率は、解決が迅速に行われた場合96%まで跳ね上がる」と書かれているそうだ。

 つまり、担当者としてはせっかく足を運ぶ以上、指摘された瑕疵をじっくりと点検した後、その他に何か不満な個所がないか、ついでに建物全体をチェックしてみることである。ユーザーとしては、何時も会社が自分の建物をみてくれていると思うと安心するし、熱心な担当者だと思うと信頼感が湧いてくるものである。もちろん、単なるパフォーマンスであってはならない。

 表の営業もクレームに向かう時の裏営業もいずれも心を込めて対応することが一番ということである。


「営業」と同じ心構えで対応を

更新日2017/06/07

 ここで脇道に逸れるが、担当者の心構えについて述べておきたい。私は、クレーム対処法を会社の従業員にお話しする時、クレームの対応はある意味の営業と思って取り組めと言っている。

 私は弁護士になる前、ある小さな会社の営業をやっていた。新規のお客の獲得が任務であった。しかし、飛び込んでみても断られてばかり。悄気(しょげ)ていたら上司から言われた。「営業は断られてから始まると思え。断られて諦めるのではなく、何度でも足を運べ」と。断られてもよいと思うと、確かに心が軽くなった。断られると「よし、これから始めるぞ」と思うわけだ。もっとも何度でも足を運ぶということは難しい。嫌がられては何も始まらないからだ。

 そこで、私はお客の所に注文を取りにいくのではなく、教えてもらいにいく気持ちで訪ねることにした。私の扱っていた商品は、プラスチックの原料だから質問することはたくさんある。しかも、お客はその道のプロだから素人に教えることは楽しいらしい。お客さんの扱っているプラスチックの特徴を調べて聞きに行く。お客も忙しくなければかなり丁寧に教えてくれる。いつの間にか親しくなるから、聞きついでにお客さんが困っていること、欲しいものなどを聞き出す。

 ある大企業の工場に通ってそこの責任者の人とそうして親しくなった。私は1年で勤めていた会社を辞めたので、通っているときは注文はもらえなかった。

心をつかむ ところが、それから2年後に勤めていた会社を訪ねたら、社長が出てきて「水津君。君が辞めてからあの大企業から注文があったよ。理由を聞いたら、君が熱心に通ってくるので何か注文を出してあげたいと上に稟議をあげてようやく通ったと思ったら、君が来なくなったのでどうしようかと思ったが、一度許可をとったこともあるから私の方の会社に注文を出したというのだ。今も続いている。本当にありがとう」と言われた。私にとっても思いがけない嬉しい話だった。お礼にその会社を訪ねたが、責任者の人は転勤でいなかった。しかし、営業のなんたるかを学んだ気がした。

 即ち、営業はお客の心をつかむことである。それは、おべんちゃらを言うことではない。真剣にお客の話を聞き、さらに深く聞き出し、それに応えることである。それを表裏をなすのがクレームを受けた担当者の心構えだ。次回はそのことを。


まずユーザーの言い分を聞こう

更新日2017/05/24

 前回の続きである。始めに掲げた質問事例は、私が実際に担当した事件での例だ。たまたま、年の暮れにユーザーからクレームの電話が入った。担当者は、田舎に帰る日が決まっていて行けそうになかった。そこで、トイレを下請した業者に連絡し、その業者の職人がユーザー先に一人で出かけていった。

 ユーザーにそのことを告げておけば少しはよかったが、田舎に帰るので駆けつけられないと言い逃れすることはまずいと考え、そのことは話さなかった。後にユーザーから指弾された第一声が実は 「担当者が来ずに下職ひとりだけ差し向けるとは、ユーザーをどう考えているのだ」 という叱責であった。それでも、瑕疵がすぐに治癒され、後に担当者があいさつに行けば、あるいはそれで終わったのかもしれない。

 しかし、結果は、再び漏水したし、その対処に行った下職の言動も問題となった。下職さんも年の暮れに急にかり出され、ユーザーにガミガミ言われ、つい腹が立ったのでしょう。やり方もぞんざいになってしまった。担当者としては自分が行かなくても直ればいいと思ったかもしれない。

 しかし、担当者が現場にいるということは大切な意味がある。それは、ユーザーの文句の受け皿という役目である。ユーザーの気持ちを和らげる第一歩は、ユーザーの文句を真摯に聞くことから始まる。

 私自身もユーザー先に行った時は、まずユーザーの言い分をじっくり聞くようにしている (もっとも、どこまで聞いていくのかについては別の機会にお話しする)。

安心 さらに、担当者が現場に行くことの意味としてもっと重大な役目がある。それは、ユーザーが指摘した瑕疵以外にも目を向けてみるということである。下職は指示されたこと以外には目を向けないが、担当者は違うし、違わなければいけない。担当者は、建物全体を知っているし、一つの瑕疵が他に与える影響も知っているはずだからである。

 担当者として大切なことは、注文者の激昴に萎縮してしまうな、ということである。注文者の話を上手に整理していくことと、多くの質問を自らしていくことである。なんといっても建物について詳しいのは担当者なのだから。ということは日頃から建物の建築過程をしっかりみておくことと、勉強をしておくことである。自信は聞く者を安心させる。


電話対応、きちんと社員教育を

更新日2017/05/10

Q.注文者から「トイレの床が水で濡れている。すぐに見に来てくれ」と電話があった。あいにく、その人を担当した者と連絡がうまくとれないが、どうすればよいか。対処法について。

電話A.クレームは、突然電話から始まることが多い。電話に出た人の口のききかた一つで、その後のクレーム解決の難易が決まるといっても過言ではない。

 クレーム対処法の第一原則「迅速な対応」の第一歩である。ユーザーは怒っているから感情的な口調である。そしてかなり気ぜわしい。自分がしゃべっていることは当然理解してくれると思う。たとえ、電話に出た人が事務などの女性であったとしても。

 そこで、まず電話に出た人は、注文者の話をできるだけ詳しく聞く姿勢が大切である。

 質問事項としては、どんな欠陥なのか。それをいつ気がついたのか。お客さんとして、何か自分で対処してみたか。ユーザーの担当者(営業マン)は誰であるのかなどである。できれば、会社としてあらかじめ電話対応マニュアルを作成しておき、誰が対応してもすぐにできるようにしておくことが望ましい。

 もっとも、つまらない質問は、かえってユーザーを怒らせる。例えば、ユーザーの担当者名である。そんなことは、会社として当然知っていると思っているからである。ユーザー名と担当者名はすぐ分かるように表でも作っておくか、パソコンに入力しておくことだ。ユーザーとしては、自分のことを知っていてくれた。担当者もすぐ分かったということだと、まずは安心するからだ。

 しかし、仮にすぐに分からない場合は、やはり尋ねておくべきだ。なぜなら、ユーザーはすぐに担当者に連絡してくれると思っているのに、会社の方で担当者を探しては、万一にもそれに時間がかかってしまっては、ユーザーの怒りは倍増してしまうからだ。

 さて、電話で一通り話が終わったら、すぐに担当者はユーザー宅へ向かうことになる。ところが、担当者が別に用事があって駆けつけられないこともある。

 次回、私が実際に会社から相談を受けた実例をお話しする。今回のまとめとしては、電話での対応について社員教育をきちんとすることをお勧めする。


まず弁護士へ相談できる体制を

更新日2017/04/26

 対処法第六は、弁護士への早期相談である。会社はクレームが始まるとその火を消すことに頭が一杯になり、全体の解決を検討する余裕を失っていることが多い。

弁護士へ相談 今まで述べてきた対処法、すなわち迅速な対応、お客さんへのきちんとした詫び方、担当者の明確な態度、安易な妥協をしない、チームワークの社内体制の確立等をきちんとしていけば、大多数は解決される筈である。しかし、最近注文者側の対応は極めて厳しく、かつ、要求が過大となっている。したがって、見通しを甘く見ていると些細な瑕疵でも解決困難な瑕疵へと拡大していってしまう。そうならないためにも、クレームが発生したらまずは弁護士へ相談できる体制をつくっておくことだ。

 弁護士には問題がねじれたら相談すればよいと思ってる企業が多いが、問題がねじれる前から相談をしていれば冷静な対処方針を指示してくれる可能性が大きい。

 冷静な対処方針というのは和解の落としどころと解決する時の文書の文面である。補修をすることは当然であるが、それだけでは終わらせてもらえない。補修が不十分だったときの将来の責任も問われるかもしれない。多分、その時は過大な負担をすることを認める内容となっているだろう。

 瑕疵の項目が非常に多いとき、それらを一括して解決するときはその旨を明記する必要があるが、不十分である場合もある。注文者側に納得してもらうことに気を使いすぎて、表現が不十分でも、あるいは注文者側に有利な表現でもそれを受け入れてしまう場合が多い。一言弁護士に相談していれば、そのようなときに内容も詰めることができる。

 しかし、相談は注文者との話が決まる前にして欲しい。というのは、注文者との話が決まった後にそれを訂正しようとしてできないことが多いからだ。これは、現在事件が進行中の事例であるが、地耐力不足で基礎にひび割れが生じ、それを解決するため杭を打つことになった。そして再び基礎にひび割れが入ったら立て直す約束をした。それを前提に弁護士に介入を頼み、弁護士も今さら別の案を提案できず、ほぼ同様の和解書面を作成した。

 後日、ひび割れが発生したので、注文者の方で建て替えを要求してきた。和解の時の弁護士は私ではなかったが、私は再度ひび割れは安全に支障はないので、建て替えはできないと主張した。再度のひび割れで建て替えというのは安全性に問題がある場合に限るという意味だが、弁護士が関与しての文面だけに注文者に対する反論は難しい。