住まいの創造人住まいの創造人

土地、景観に調和するスタイルを求めて
その地にどっしり根付く家こそ本物

vol.022

東園建築 代表
東園 忍 氏

 鹿児島商工高校(現在・樟南高校)の機械科に駅伝部の特待生として入学、卒業後九州工業専門学校に進むが1年でUターン。家業の東園建築を継承。父親の背中を見て育ったこともあり、大工になりたいとの思いが強くなり、大工の腕を磨き、じっくり時間をかけて家づくりと向き合う日々。2級建築士、鹿児島県建築士会会員。趣味は仕事と飲ん方。休みの日は時間があれば建物・陶器・木彫りなどのあらゆる手作りの作品鑑賞、自分の感性磨きに時間をかける。「阿久根産食材で人をもてなすのが楽しい」と笑う。好きな言葉は一期一会。家族は子ども2人と夫人の4人暮らし。会社所在地は阿久根市鶴川内9789-1。同市出身の48歳。

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 「家は施主・施工・設計の三位一体で創るもの。このうち一つでも主張が強すぎるとバランスが崩れる」と、持論を展開する。そこには景観に調和し、お客様が満足する家を追求する職人魂が生きる。お客様と対話しながら、じっくり時間をかけて創る家づくりを基本にしている。
 父親の和明さん(現会長)が昭和42年に個人創業、その技術を忍代表が継承、地元で東園建築と言えば、「ああ、あの大工さん」と、地元では腕の良い大工として名前が通っている。
 家づくりは、お客様にとっての一大イベント。「家は建ててから本当の付き合いが始まる。だからお客様の思いをどこまで汲み取り、住み心地のよい家づくりができるか、夢を叶えることができるか、そこが一番重要なポイント」と、力を込める。
 大工の値打ち・評価は、お客様にとっていかにいい「住み家」を形にできるかに掛かっている。だからお客様の気持ちに寄り添い、時間をかけて夢の実現を模索しながら一軒の家を仕上げる。そのために求められるのは、揺るがない三者、施主―施工業者―設計者の信頼関係である。「この三者のバランスをどうとるかが難しいところ。三者三様の思いを大切にしながら自分が一歩下がるつもりで…」と、謙虚な気持ちを大切にしている。
 「私の尊敬する職種は料理人。おいしい料理を思い描き、いい味を出してお客様の好みを考えて華やかに盛り付ける。食材、腕、盛り付け三拍子が揃わないと、その店は流行らない。そこには、お客様においしく食べてもらいたいという料理人の強い思いが存在する」と、大工の道と重ね合わせる。
 家づくりのスタート時にお客様に必ず質問することは「趣味」、「好み」、「お気に入り」、「一番のこだわり」。それを聞きながらお客様の志向を汲み取る家づくりは「自分らしさ」が映える。オーナーにスタイルを強制するだけでは本当の家は出来ない。「こんな家にしたい」と、マイホームを希望する人であれば誰しも憧れを抱くものだが、あまりウェイトを掛け過ぎると生活を始めてからのゆとりがなくなる。休日にゆっくり過ごせる落ち着く家づくりが重要。

 「家づくりにはさまざまな職人が関わる。弊社は、ローコストでお客様にご満足いただける家を提案するため、常にオールスターズ(一流の仲間)で臨む。自分が良い腕がないと指示は出せないし、二流ではオーナーの期待に十分に応えられない。仲間たちと共に、一流の技を生かしながら仕事をしたい」と、プロ意識にこだわる。
 大工に求められるのは、精度と技量。差し金(cm金)、ノギス、レーザーなどの計測、昔ながらの大工道具手カンナ、ノミを自在に操り、木工機は超仕上げ・自動ガンナ盤(オートリターン式)のハイテク木工機を使いこなす。仕上がり寸法は0・1ミリ単位の精度。「良い木材は横綱クラスの木工機で加工したい。〝昔ながら〟と〝最新技術〟の併せ使い。そのためには経験や技量が物を言う」と、大工としてのプロ魂を磨き続ける。
 「昔は、大八か、大工かと言われた時代もあった。それは、大工の技量を推し量る言葉。私たちの時代は、早く一流・一人前の大工になろうと頑張ってきた。でも今は時代が違うのか、半人前でも最初から一人前のお金をもらう。これでは、本物の職人魂は育たない。それなりの経験を積み、技量を身につけるためにはもっと鍛練が求められるのではないか」と、疑問を呈する。「職人を育て守るには、どうすればよいかもっと考えるべきでは」と、業界人として、先行きを心配する。同業者から問い合わせがあれば隠さずすべて教える、建築業界全体のレベルを底上げしたい。木材加工を依頼しているプレカットの精度(寸法・仕上がり)が甘いときは「指示通りになっていない」と注文をつけることもある。「口うるさい。厳しいと言われるかも知れないが家のレベルを上げていきたい」と、こだわりを忘れない。

 年間建築棟数は平均4棟ぐらい。すべて、じっくり時間を掛けて対話型の家づくりに力を入れる。施主に対しては「感性をしっかり磨いてからの家づくり、視点を変えて見なさい」と、アドバイスする。感性豊かで創造性を働かせる家が目標。
 家づくりに使う木材もピンからキリまで。「私は敢えて高い方で行く。請け負いとして儲けを削り、質にこだわる。日本人は木が好き。木があると落ち着く。経年変化により味わいが出るなど木材の持つメリットは多い。出来る限り自然素材、地元産材を用いる家。あくまでも基本をベースにこだわりの技術に重きを置く。
 同社のコンセプトは、その土地の景観に調和し、どっしりと地に根付く家。深い軒、安定した支持力が見せる外観、広縁の廊下など昔ながらの味わいが生きる。
 「お客様から、あの家かっこいいよね。雰囲気いいよねの声を聞いたときが一番うれしい」と、最後に笑顔を見せた。

更新日:2016/03/29

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