SUMIKA 10号
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 住み心地の良さを生んでいるのは何か、考えたことはあるだろうか。建物の性能からくる安心感、清々しい空気をつくる素材、動きやすい間取りや動線。それぞれに答えがあり、いずれも正解だ。さまざまな要素に思いを巡らせる中で、果たしてどれだけの人が光(自然光と人工光)のことを気にするだろう。もっとも原始的な光であるキャンドルの灯りは人の気持ちに安らぎを与えてくれる。炎の揺らぎを見ると落ち着くというのは、私たちのDNAに刷り込まれているのかもしれない。しかしながら家づくりにおいて光は軽視されてはいないだろうか。「明るければよい」と安易に考えられてはいないだろうか。今回SUMIKAでは家の光と明かりに注目。太田則宏建築事務所(通称オノケン)主宰の太田さんにお話を聞かせてもらった。太田さんの棲みか 太田さんは自らが手掛ける家のことを「棲みか」と表現する。「棲みか」のプランニングには一貫したテーマがある。本特集の題材である光と明かりについても同様のことがいえるので、まずはこの「棲みか」について説明したい。 太田さんは商品としての住宅ではなく、住む人が営む「生活」のリアリティーが浮かび上がった家づくりを目指している。太田さんにとって家は施主の単なる所有物ではなく、例えばテラスでビールが飲みたいからとイスを運び出したり、窓が切り取る景色によって季節の変化に敏感になったりと、家もまた人に影響を与えているような、対等な関係性で結ばれているものだ。だからこそまず太田さんは、施主にどのような生活を送りたいかを聞く。そしてその中から大事にしていることを拾い上げ、それらの希望を家に落とし込む作業で初めて、最適な広さ、動線、素材が見えてくる。光についても同じ。人それぞれで異なるライフスタイルや好みによって、光の計画も変わるのだ。暮らしの明かりはどうあるべきか? 明るい部屋を求める人もいれば、照度を抑えたい人もいる。一概に「住まいの光や明かりはかくあるべき」とは言えないわけだが、蛍光灯が普及し始めた頃から日本の家は夜でも昼のような明るさで照らされる傾向にあった。太田さんは「明るすぎる=悪いこと」ではないと話すが、「個人的には、1日の中には朝と昼と夜があり、そのリズムのなかで生きているのに、夜も昼と同じような明るさを求めるのは1日の半分しか楽しめていないようでちょっともったいない気がするし、体も疲れてしまう」と続ける。大事なことは、光が自然やその人なりの生活の中で当たり前のように浮かび上がること。つまり明かりそのものが主役なのではなく、その場所でどのように過ごしたいのかに基づいて選んだものが快適な明かりなのだ。各部屋の明かりの目安 一般論として、ダイニングには料理を美味しそうに見せ、人が集まる場を演出する明かりが求められる。またキッチンでは作業する手元を明るく照らす明かりが適している。そのほかの部屋についても、明るければよいというわけではない。生活を見つめ直すことで、快適な光は導き出される。134

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