SUMIKA 9号
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 窯の温度はおよそ1300度。隠れ窯に集った有志たちは、3日3晩火を絶やすことなく、その日の気温や湿度に合わせて繊細な火の調整を繰り返しながら作品に命を吹き込んでいく。 開窯は2001年。川辺小学校の校舎改築による廃材を利用して、地元の有志らのボランティアにより完成した。3年半前に作り直した窯の奥行きは12メートル、煙突の高さは6メートル。湯のみであればおよそ3000個を一度に窯入れできる大きな穴窯。釉薬を使わず、溶けた灰が釉薬の代わりとなるため、変化と色彩に富んだ世界でただひとつの作品が出来上がる。 川辺地区の窯元マップにも記載されていない、文字通りの隠れ窯。しかしその門戸は広く、事前の連絡さえとれば誰でも気軽に見学や陶芸体験を行うことができる。代表の鶴田豊さんは「隠れ窯は、いつでも自由に工房に集って作品を作ることができます。穴窯の歴史は千年以上。陶芸家のいきつく所ともいわれています。手間と時間をかけてひとつの作品を作る。こんなに原始的で、ダイナミックで、エコで、そして楽しいことはありません」と話す。 日々の暮らしに寄り添う、手と土のぬくもりの陶器。そこに〝自分で作る〞という大きな感動をプラスしてはどうだろうか。上/3昼夜休むことなく続く窯焚き右上/工房の壁にはこれまでの火入れの記録が記されている。取材時は112回目の火入れ右下/東日本大震災発生から約1カ月後、地元有志がバスを走らせて被災地に直接届けた“絆”印の湯のみ長い夜を乗り切るために腹ごしらえ。土や炎だけでなく、仲間(そして自分)との語らいも楽しみのひとつ17

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