My Life Style
Story of クローナ there is the Woods
森のクローナ
<Sumika 8号>
国富町・深年で雑貨と家具のお店を営む、大島裕介さんと純子さんのお話
紡ぐように、編むように日々の暮らしに寄り添う
国富町深年。町を抜けて法華嶽公園へ延びる県道356号線から、1本の細い脇道と緑のトンネルを越えた先に建つクローナ。朝の光が注ぐ森の中に、まだ真新しい2棟の木の小屋が並んで佇んでいます。森に向かって左が店舗、右が工房です。
木の香漂う扉を開いて迎えてくれたのは、クローナの店主・大島純子さんと家具職人の裕介さん夫妻。宮崎市内の花ヶ島町や清水町など街中に長く(15年ほど)店を構えていましたが、2020年9月、夏の終わりに街から森へと活動の拠点を移しました。
幼少期を大阪で過ごし、小学4年生の頃に宮崎へやってきた純子さん。宮崎の大学を出ると大手損害保険会社に就職しましたが、元来好きだった雑貨屋さんへの想いが募って25歳で転職。裕介さんとの結婚を機に、オリジナル家具やオーダー家具、木工品、様々な雑貨や暮らしの道具を取り扱うクローナを開業しました。
店舗で取り扱うのは、純子さんがセレクトした「生活まわりのもの」。日々の生活にスッと馴染む、使い手にとっては大切で特別な存在になる道具たちが並んでいます。
「街」から「森」へ場所を移しても、ずっと変わることのないクローナの想い。純子さんは「この場所で暮らしの中にある大切なものに気づいてほしい。何気ない日々の『あした」へ向かって、心が動き出すような場所になればいいですね」と話します。
真摯に木と向き合う裕介さん。今後は地場産の木を使った家具にも取り組みたいと話す
世代や時代を超える100年仕立ての家具
昔ながらの常連さんも、初めて訪れたゲストも、ついつい長居をしてしまう「森のとまり木」のような場所。耳を澄ませて聞こえてくるのは、風の音、木々の音、烏の声、山から湧き出る水の音、そして工房からリズムよく響いてくる家具作りの音です。トントン、シュッシュ…。
家具職人の裕介さんは、若い頃にアメリカ、北米、南米、ヨーロッパなど世界を旅して(ときには長期滞在して)回った経験を持つバックパッカー&サーファー&元バンドマン。一時はサービス業に就きましたが、旅の途中で見た路地裏の小さな工房(靴職人、ギター職人)の生き方・在り方が忘れられず、25歳で職業訓練校に通って木工を学びました。
職人としての感覚や気持ちに正直に向き合いつつ(自分を律することも忘れず)、使い手や住まい手の暮らしに合わせた家具を生み出す裕介さん。その家具は優しさと強さを併せ持ち、凛とした存在感をまとって場に溶け込みます。
世代や時代を超えて、暮らしと共に在り続ける家具を作りたいと願う裕介さん。50年後、100年後の未来、いつかどこかできちんと手入れをされてきた古い家具に出会ったら、そっと天板や台座・脚の裏を覗いてみてほしい。歴史を物語る傷や埃とともに、そこに焼き付けられた「Story of クローナ there is in the Woods」という刻印を見つけることができるかもしれません。
小さな森から生まれる、クローナの物語。何気ない日々を丁寧に紡ぐように、心を込めて編むように、そして本のページを1枚1枚めくるように…。森の中に佇むクローナは、そんな気持ちを大切にしたいあなたにいつも寄り添っています。