My Life Style
休日を過ごす、もう一つの棲家
上町ガルテン
<Sumika vol.28>
ドイツで 200年の歴史を持つ、クラインガルテンという暮らし方。直訳すると「小さな庭」。自宅とは別に小さな家と畑を借りて、ゆっくりと休日を過ごすライフスタイルが文化になっている。豊かな自然の中で、家族とともに過ごすもう一つの居場所。自由な時間と、自在な空間を提案する「上町ガルテン」を訪ねた。
もう一つの棲家で過ごす「上町ガルテン」の休日
クラインガルテンとは、ドイツで200年の歴史を持つ暮らしの文化。直訳すると「小さな庭」。ドイツのシュレーバー博士によって提案された「滞在型市民農園」を指し、小さな住まいと畑を借りて、週未や休日をのんびりと過ごすライフスタイルが定着している。
大隅半島を拠点に、豊かな自然と人情と文化に寄り添った住まいを創り続ける『新越建設』。ヨーロッパ研修でクラインガルテンの存在を知った代表の新越修一さんは、鹿児島市のデザイン工房『DWELL』とともに、鹿児島ならではの新たな暮らし方を提案する「上町ガルテン」をプロデュース。「豊かな自然が当たり前に存在する分、自然との深い付き合いや楽しみ方を暮らしの中に積極的に取り入れる人は少ない」と話す。
敷地内には小さな棲家、緑の庭、離れのお風呂、収納小屋が点在し、隣地のゆすの木の巨木が大きな木陰(冬には大きなこもれび)を作り出している。庭にはジューンベリー、ブルーベリー、ローズマリー、さくら、もみじ、ヒメシャラなど様々な植栽が育ち、借景の竹林や椿の花も目を楽しませてくれる。
家の内と外を行き来することが多い「上町ガルテン」の休日。室内は欧米の文化を取り入れ靴のまま出入りOK(ロフトと書斎のみ土足禁止)。海外の文化と日本の文化をミックスした「新しい暮らし」は、同時に空や太陽、雨、風、火を身近に感じる事が出来る「古き良き暮らし」なのかもしれない。
四姉妹と仲良く過ごす新越ファミリーの休日
「上町ガルテン」からほど近い場所に建つご自宅で、ご夫婦+4姉妹が暮らす新越さん一家。2年前にはラブラドール・レトリバーのルル(女の子)も家族の一員となった。自宅でも子ども部屋を分けることなく、ひとつの空間をシェアして使うほど仲の良い姉妹。幼い頃からキャンプや登山を楽しんで過ごしただけに、4姉妹にとってはテント設営や、薪ストーブ&五右衛門風呂の焚き付けも慣れたもの。広い庭を走り回るルルと一緒に、日常のすぐそばにある非日常を愉しんでいる。
家族の団らんだけでなく、ひとり時間の活用や巣ごもり部屋としても利用できる棲家。受験やテスト勉強の時期にはロフトや害斎、ダイニングテーブルを姉妹で使い分け、黙々と勉強に集中する日々もあった。
取材当日は、くしくも就職と進学を控えた次女(かなえさん)と三女(萌さん)の旅立ちの日。みんなで過ごした日々をいつくしむように、笑顔と笑い声の絶えない時間が過ぎていく。濃密な子育ての時期を経て、今まさに子どもの旅立ちを見送る立場にある恭子さん。あらためて「家とは?」と尋ねると「広い家はいらない。いつでも子どもの顔が見えるような、家族が自然と集まる空間があればいい」としみじみと話す。
夜通し航海する長距離フェリーに乗って二人の娘さんが旅立った夜。長女のちひろさんと四女のひかるさんに寄り添う「上町ガルテン」は、ほんの少しだけ広くなった気がした。
ルームツアーやイベントでライフスタイルを体感
「上町ガルテン」はモデルハウスとしての利用だけでなく、住まい手や建築予定の方を対象にしたイベントを今後積極的に開催予定。これまでにも住まい教室、クリスマスリースづくり、ピザ焼き体験などを実施し、多くのゲストがその居心地の良さを体感した。宿泊体験を実施する予定は今のところないが、取材当口は特別にロフトに布団を準備してもらい、「上町ガルテンで過ごす夜」を満喫゜
離れの五右衛門風呂は、焚き付け場や、脱衣場、シャワースペースがゆとりを持って配置され、使い勝手も抜群。火加減と湯加減を調節しながら鉄窯の中に身を沈めれば、体の芯までポカポカと熱が浸透する。もちろん湯冷めもしにくく、熾火の状態を長く保てば一晩で何度でも楽しめる。実際、恭子さんは①夕方、②ご飯の後、③就寝前の計3回は五右衛門風呂に浸かるのがルーティン。
薪ストーブ、焚き火、五右衛門風呂と「火のある募らし」を体感し、昼は窓を開けて風と光を感じ、夜は明かりを落として深い闇を知る。翌朝、帰る間際に「ここはテレビもWifiもないんです」と告げられるまで、一度もテレビやインターネットを必要としなかった自分にようやく気が付いた。