住まいの創造人
家は人が造る。ベースにあるのは職人の思いと技量
機械づくりから家づくりの道へ
奇をてらうやり方はしない
マル川建設(株) 代表取締役
川原 和人 氏
鹿児島高専機械工学科を卒業後、精密機械を設計・製造するメーカーに入社、東京で6年間サラリーマン生活を送ったあと、26歳の時に帰郷。家業のマル川建設に入社、社員、専務を経て平成九年に社長に就任、現在に至る。技術者として一生を終えるか、ロマンのある家づくりに夢を賭けるか、当初は迷いもあったそうだが、決断してよかったと振り返る。資格は、2級建築士、1級建築・土木施工管理技士、宅建建物取引業などを取得。子どもは2人で、娘さんと娘婿も家業に関わっている。趣味は、山登り。好きな言葉は「正直に生きる」。
本州にある山への登山と海外旅行が夢で現在、英語の勉強を続けている。南九州市川辺町出身の60歳。
「自然の素材を大切に職人が住まい手の立場になって想いを込めて造る。だからこそ満足感が出せる」―。川原社長の一貫したブレない家づくりのベースは、職人の1人ひとりの技量。ただひたすらに地道に積上げてきた確かな技術が、その家を支える。数十業種の職人が家づくりに関わり、その総合力でいい家か、どうかの評価が決まる。創業以来、「家は人が造る」を頑固に貫く。家づくりの話になると、つい熱っぽい口調になる。その語り口、ひたむきさには職人気質がのぞく。
元々同社は、祖父の甚太さんが水車の動力で丸鋸を回す製材所を創業。その後、父親の豊吉さん(昨年、85歳で他界)が継承、人と手間をかける職人技で工務店としての歴史を積み重ねてきた。今年で創業63年の歴史を刻む地場工務店。現在の和人社長は、三代目。
大工をしながら製材業を営むという典型的な地場工務店の歴史を紡ぎながら家づくりにかかわってきた。そこで培った職人気質、人脈を継承し、「住まいとは何か」の本質を究めるのが同社のモットー。
年間新築戸建住宅は平均十棟。これまでの実績着工戸数は約1千棟、リフォームは約千五百棟と、地域密着経営で揺るぎない会社の基盤を築き、安定路線を歩み続ける。
同社が手掛ける家づくりのコンセプトは、自然素材の魅力や機能を十分に引き出し、職人の手造りによる完全なオーダーメイド住宅。そこには、住まい手側の想いを忠実に再現する手づくり感に加え、決して妥協することのない基本に忠実な職人技が生きる。
「職人である大工を育て、現場監督の技量を常に向上させながら住まい手の満足のゆく家づくり」をしている。
家は、快適に暮らし日々の生活が満足できる場所。「住み心地をエンジョイできる住まいこそが基本。だから人より違ったことをして人気を取るような奇をてらうやり方は一切しない。軸足をきっちり地につけて全力投球の職人技を結集する基本にのっとった住まいづくりを推進する」と、ブレない家づくりに注力している。
勿論、健康、快適、省エネなどの面から24時間換気、シロアリ駆除、子どものアトピー性皮膚炎対策など、住まい手のニーズに合わせて新技術、新工法を積極的に採用することも忘れない。
建築業界の課題は、なんと言っても人手不足。専門職の人材育成は決して避けて通れない。それをきっちりフォローするのも地場工務店の大きな役割。「職人の日々の研修、資格取得へ向けた支援、人手不足を補う女性社員の活用・戦力化など課せられた宿題は多い。とくに女性社員の活用では勤務時間変更によるシフト制の導入など融通の利く職場改革が必要」と、先を見据え、子育て世代の女性を応援する仕組みも整えつつある。
大工、左官の職人の育成では、中・長期の視点に立った戦略を実践、昔から「5年経ったら一旦外(よその会社)に出すことにしている。これは、仲間をつくってもらうのが狙い。手間請けによる発注などのメリットを生かせれば、次の受注にも繋がる。仲間ができれば、その関連団体への仕事も入る。若い大工は一人前になるのに5-10年はかかるが、その途中経過の中でワンクッション置き、他人の飯を食べることで大きく成長する」と、狙いを語る。
また、仕事の中で一番大切にしていることは「どんなに小さいことでも手を抜かずに完璧に仕上げるディティールのマスター。きめ細かな技が勝負のポイント」と、職人の育成に軸足を置く。「会社のカラーを出し、真似をせず、歴史を積み重ねていけばお客様から評価してもらえる」と前を向く。目標は常に完成度の高い家だ。
経営のトップとして常に社員に強調していることは「ごまかさない。真面目に…。この実践こそが経営安定の道」と説く。「ごまかせば利益は上がるが会社の存続にかかわる。また、事故を起こせば、信頼を失うことになりかねない。変なことは絶対するな」が口癖。
さらに同社では、営業段階、資金計画から完成まで全て1人でやりきることを基本にしている。お客様の意図(希望や考え)を汲みとり、そのイメージを家に落とし込む戦略だ。ここにも〝家は人が造る〟と言う原点が息づく。
また、お客様の顔が見える関係との観点から完成後のメンテナンス、アフターの強化、見学会、需要が高まりを見せている宅地の造成事業にも力を入れ、紹介客を掴む努力も惜しまない。