住まいの創造人
住まう心にゆとりを乗せて
お客様の喜びを励みにポチの家から3階建てまで
フチケンホーム/(株)淵建設 代表取締役
淵脇 貢 氏
近畿大学工学部建築学科卒業。鴻池組、名古屋市の設計事務所勤務などを経て帰省。地場の森山工務店で住宅部門を担当し、経験を積む。1984年(昭和59年)、35歳で淵建設を個人創業。96年(平成8年)に住宅専門会社フチケンホームを設立する。一級建築士、一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、インテリアプランナーなどの資格保有。趣味は、SUVとジムニー(昭和56年式)の管理。好きな言葉は「住は聖職なり」。長男夫婦と長女(経理事務担当)の4人家族。伊佐市(旧菱刈町)出身の69歳。
柔和な笑顔と穏やかな語り口。訥々(とつとつ)と語る表情には、これまで家づくり一筋に打ち込んできた職人としての自信がみなぎる。小さい頃から手先が器用で、近所にいた大工さんの姿に憧れた。ビル、マンションの建設に興味があり、大学の卒論も建築学を選択。3人兄弟の長男として責任感が強く「将来は郷里に帰らないといけない」と決めていたこともあり、技術を生かせる地場工務店の設立が目標だった。
そのためには、若いうちに建築士の資格を取り、だれよりも多くの経験を多く積むことを目指し、勉強に打ち込んだ。「家は一生で一番の高い買い物。いい加減なことはできない」と、肝に銘じる。だから、まず基礎をしっかり学び、経験を積んで「お客様に満足してもらえる住宅を自信を持ってお届けしたい」と願い、続け努力してきた。
建設会社から設計事務所に転職したのも一日も早く木造住宅を自分の手で設計し、思い通りの家を建ててみたいという夢をかなえるための選択だった。帰郷後、迷うことなく鹿児島市内の地場工務店に就職。住宅部門を任され、木造住宅の設計、建築を担当した。規模の大きい鉄骨造、コンクリート造住宅も手掛けたが、やはり一番面白かったのはお客様とやり取りしながらの木造住宅だった。ゼネコン2年、建設会社3年、設計事務所2年、地場工務店6年と、しっかり手順を踏み現場を踏んだ。「現場が自分を大きく成長させてくれた。遠回りに感じることもあったが多くの現場を経験することの大切さも知った」と、振り返る。
経営理念は、潮田健次郎氏(トステム創設者/現・LIXIL)の「住は聖職なり」。良い住宅を建てることに使命感を持って取り組みたい-という信念を貫き通すことが一番と言い切る。新築の年間棟数は3~5棟(累計100数棟)。リフォーム・リノベ軒数は年間20~50棟。「住みごこちゆとり一新」「ポチの家から3階建て住宅まで」「住まう心にゆとりを乗せて」をキャッチフレーズに造り手の思いを伝える。
これまで仕事をしてきた中で、考えさせられた出来事は3年前の熊本地震。国交省からの被災住宅診断に10日以上、現場へ通い詰めた。「若い人は再建へ向けての意欲もあり立ち上がる力もあるが、その一方で多くの高齢者の方が立ち入り禁止の紙を張られて住む場所を失い、途方に暮れて涙ぐむ姿を目の当たりにした。81年以前の耐震基準で建てられた家が多く、応急対策として一番安全な一帖の居場所(シェルターとしての役割を果たす所)の確保や簡単な防水・コーキング処理などをアドバイスすることぐらいしかできなかった」と当時の不甲斐なさを振り返る。それ以来、安全で倒れない頑丈な住宅というワードが頭から離れず、地震に強い家にこだわる。「熊本地震は耐震の重要性を業界に投げ掛けてくれた。これからも、聖職を全うできるよう、丈夫な住まいを提供したい」と語る姿は職人の顔に戻っていた。