My Life Style
仕事と趣味と日々の暮らしが響き合う グラフィックデザイナー・下南友江さんの暮らし
余韻のある家
<Sumika vol.26>
家族が暮らし、仕事を営み、音色を奏でる、丘の上の白い棲家。暮らしと仕事と音楽がゆるやかに(ときにリズミカルに)繋がる、グラフィックデザイナー・下南友江さんのとある一日を訪ねました。
アイデアやイメージ、リズムを生み出す
余白と余韻のある空間
市街地と桜島を望む、丘の上の白い家。グラフィックデザイナーの下南友江さんと、ご主人の文人さん(Webデザイナー)、そして二人の息子さんが暮らしています。
扉を開くと、まず目に飛び込んでくるのは2階リビングヘ伸びるスケルトン階段。階段側に大きくとられた窓からは朝の清々しい光が射しこんでいます。1階には夫婦2人の仕事場を、2階には家族の暮らしの場を設けることで、仕事と暮らし(あるいは趣味と暮らし)が階段を通じてシームレスに繋がる住まいを実現しました。
下南邸の竣工は2009年3月。「開放感とシンプルな白い箱」をテーマに、少ない間仕切り、高い天井、借景を愛でるウッドデッキなどを下南さん自らプランニング。北向きのオフィスへの日当たりを確保するためにスケルトンの階段を提案したのは、かつて大学で建築を学んだご主人でした。夫婦のデスクが向かい合うオフィスは、共通の趣味(音楽)を愉しむ空間でもあります。「仕事か趣味か」ではなく、「仕事も趣味も」適度な距離感とバランス感覚でうまく調和しています。
「デザインとは整えること」。仕事だけの話ではなく、日々の暮らしにおいても家族や子どもの成長・変化などに柔軟に対応しながら、その都度おりおりのタイミングで居場所と居心地をきちんと整える事こそ、住まいに余白と余韻をもたらすコツなのでしょう。
そこに在るだけで重たく静かな余韻を纏っている
【余韻】
1 音の消えたあとまで残る響き「余音」とも書く。
2 転じて、事が終わったあとも残る風情や味わい。また、詩文などで言葉に表されていない趣。余情。
※出典二広辞苑(第七版)
とりどりの白に包まれた シンプルで丁寧な暮らし
家族の成長や、 自在に変化する暮らしに寄り添う、 余白のある生活空間
下南友江さんは、鹿屋市の生まれ育ち。高校を卒業すると熊本の大学へ進み、帰鹿後は印刷やデザインの世界に活躍の場を求めました。結婚を機にフリーランスになってから、はや20年以上のキャリアを積んできた友江さん。音楽との付き合いは、さらにずっと前。「実家の長い廊下の奥にあったオルガンを弾いていた」という記憶は、4歳の頃の遠い思い出。以来、クラシ ック、ブラスバンド、ブルース、ポップス、ロックなど様々なジャンルの音楽に親しみ、現在はJAZZ
のベースを趣味としています。
「日々の活動のベースはすべてこの家の中」と話す友江さん。日常と非日常(ONとOFF)のスイッチを切り替えるのではなく、常に様々なタスクをこなしながら(家の中を何度も行き来しながら)仕事と暮らしと趣味がシームレスに繋がる友江さんの一日。桜島や市街地、緑の果樹園を望む美しい見晴らしや、ウッドデッキで過ごすひと時もまた、一服の清涼剤となっています。
不必要な物を持たず、置かず、見せない暮らしは、友江さんの昔からのライフスタイル。小学4年生の頃にはすでに整理整頓を心がけた暮らしを自ら実践。その分、長く使える家具や家電、食器、楽器、雑貨にこだわり、グリーンやファブリックによる模様替えを楽しむなど、私らしさに包まれた暮らしを叶えています。
美味しい物は、 美しい。食は暮らしのおへそ
一家にとって「食」は暮らしの真ん中であり、「食卓」は家族の会話や笑顛が交わる場。朝、昼、夜の3食だけでなく、お弁当、ブランチ、おもてなし料理など様々なメニューが日々のテーブルを彩ります。
取材時のメニューは、鶏ハム、いんげんとベーコンのオムレツ、レッドキャベツのマリネ、ポークソテーのバルサミコソースなど。晩御飯をアレンジする息子さんのお弁当には作り置きや残り物は使わず、前日に準備を済ませた食材に必ず火を通して新鮮な旨味と愛情をとじ込めます。食べ盛りの高校生男子のお弁当。試行錯誤の末、下半分に白ご飯、上半分におかずを詰めるボリューム満点の「のっけ弁当」に行き着きました。
「デザインという仕事柄、お弁当箱をパッと開いたときにウキウキするものを目指してしまう」と話す友江さん。仕事へ向かう姿勢は家事やキッチンでも変わる事がなく、彩りやバランスはもちろん食材選びから下ごしらえなど見えない部分にまで気を配ります。
丘の上に建つ白い棲家のテーブルには、今日も美味しさと美しさを細部に宿した料理が並び、笑頻や笑い声の余韻を纏ったまま一日の終わり(と新しい朝)を迎えます。
※①~⑥は下南さんが撮影した日々の食の記録