My Life Style
Sumikaの巻頭特集
自在な可能性を秘めたアトリエのある暮らし

畑や雑木林に囲まれたのどかな地に佇む、平屋の棲家と小さなアトリエ。空は青く高く、翼を広げた鳥や飛行機が気持ちよさそうに飛び交っている。鹿児島空港からほど近い、溝辺麓の棲家を訪ねた。(写真と文・高比良有城)

夏には大きな木陰をつくり、冬にはキラキラとしたこもれびを庭に落とす大さなイスノキの下で。日常と非日常(アート)が織りなす「かごしま暮らし」を満喫する清水さん一家。
平屋の棲家に寄り添う、三角屋根の小さなアトリエ小屋。レトロなガラス戸の入口では、田の神さまの夫婦像がにこやかに迎えてくれます。ここは、グラフィックデザイナーの清水美希さんが主宰する「美術とデザインの教室/アトリエ清水」。地城の子どもたちを対象にデザイン、絵画、イラスト、造形、工作などを教えています。
美希さんは霧島の生まれ育ち。幼い頃から絵を描くことが好きで、高校は美術科のある松陽高校に進学。静岡の大学でも美術・デザインを専攻し、卒業後はデザイナーとして東京で生活していました。


ご主人の大将さん(ウェブデザイナー)は、埼玉県の出身。東京で出会った2人は結婚。長女の仁子ちゃんを授かりました。当初から「いつかは鹿児島で暮らしたい」という思いを共有していた美希さんと大将さん。2016年、幼い仁子ちゃんを連れてUターン。現在は長男の理冬くんと家族4人での鹿児島暮らしを営んでいます。
「自然の中でのんびりとした子育てがしたい」。夫妻は、畑や雑木林が広がるのどかな地に棲家を構えました。設計・施工は霧島市国分に本社を構える鎌田建設株式会社。大将さんが考え抜いた間取りを元に、のびやかで余白と余韻のある生活空間を実現。家族が集うLDKは、白を基調とした内装と、浮造り仕上げの杉の床、高い勾配天井が特徴。新しい暮らしを自在かつ多彩に彩る、白いキャンバスのような棲家が完成しました。


アトリエの設計は、株式会社おりなす設計室に依頼。趣のあるガラス戸は、古民家の扉を再利用しました。扉の前で迎えてくれるのは2体の田の神さま。男性と女性が対になった夫婦像です。
アトリエ清水」に集うのは、霧島、国分、姶良方面から通う子どもたち。基本のデッサンを軸に、アクリル画、水彩画、エ作などを通して美術やアートを学んでいます。ときには大人を対象とした美術教室やワークショップを開催。子どもも大人も一緒に時間と空間を愉しめる場です。
庭には、一本の大きなイスノキが枝葉を広げています。太い枝に吊るされたブランコが揺れ、アトリエを訪れた子どもたちはいつも大きな木のまわりをグルグルと走り回っています。イスノキの別名であるユスノキには「結寿の木」という漢字が当てられ、縁起の良い木とされているとか。

「スポーツや音楽、習字などの習い事の中に『美術』という選択肢があってもいい」と話す美希さん。
2023年、40歳という年齢を機に「やらない後悔よりも、やる後悔」という言葉に導かれてスタートしたアトリエ小屋のある暮らし。未来を描く暮らしのキャンバスは、いつも新鮮な驚きと喜びに満ちています。

アトリエ小屋のある家 Sumika vol.32