住まいの創造人
お客様の生活習慣や嗜好をより引き立てる家を
職人の手刻みで創るオーダーメイド住宅
(株)異島住建 代表取締役
異島 博臣 氏
長崎大学経済学部経営学科卒業後、農機具メーカーのクボタに入社、6年間勤務したあと、祖父の面倒を見るため湧水町に移住。地場の工務店勤務を経て、33歳の時に現在の会社を創業。今年で7年目。趣味は、スポーツ観戦、釣り、絵画、水泳など多彩。好きな言葉は「一粒百行」(一粒の米を作るためには100の工程が必要で、あらゆる努力をする)。資格は二級建築士、一級建築施工管理技士、シロアリ防除施工士、管工事施工管理技士、浄化槽設備士などを所有。家族は、夫人と男の子2人の4人暮らし。会社の所在地は、姶良郡湧水町北方2190。福岡県北九州市出身の39歳。
「家はまず、住む人の命と財産を守るため丈夫で安心して暮らせる場所でなければならない」が同社の住まいづくりのコンセプト。この基本をベースに、そこに暮らす人の日頃の生活スタイルや趣味・嗜好などを配慮、その土地の気候風土を織り込みながら一番快適な生活をデザインする会社―と、目標を揚げる。
プロの職人集団を引っ張る若いリーダーは、常にお客様目線の思いを職人に伝え、昔ながらの伝統や工法を大切に新旧の技術や工法を駆使して、質の高い家づくりに励む。創業のきっかけは、田舎に一人で暮らす母方の祖父の面倒を見るため、湧水町に移住してきたこと。地元の工務店に就職、働くうちに自分で会社を持ちたいという思いが強くなり、平成22年5月に現在の会社を創業した。左官や大工など腕のいい職人に声を掛け、体制が整ったのを受けて、「これなら行ける」との確信を得て会社を立ち上げた。
「一軒一軒の家にじっくりと時間をかけて、丁寧な技術で紡ぐ職人技の凄さが口コミで広まる地場工務店経営」をモットーに、プロが建てる家を謳い文句に地道にチームワークで取り組んだ。勿論、会社経営も試行錯誤の日々。福岡県北九州市出身の自分に大きな壁となって立ちはだかったのが難解な鹿児島弁だった。独特のイントネーションに加え、言葉を短くしてしゃべる鹿児島弁が分からず、理解するのに四苦八苦。その都度、知り合いを介しての〝翻訳〟で、なんとか、その場を乗り切り、分かるようになった。「いやぁ大変でした。一番の難関だったかも。今では不思議と会話が耳に入ってきますけどね」と、振り返る。
移住して間もないころ、北九州へのUターンも考えたが、お客様から「不具合など、なにか修理が必要になった場合はどうすればいいの。誰に頼めばいいの」と言われ、「建てたあとからお付合いが始まる地場工務店の存在」を強く意識するようになった。子どもの成長、豊かな自然、高速道路も開通して便利な地域になりつつある好条件が、鹿児島に居座る結果になった。
年間建築軒数は平均4棟。丁寧な手刻みを売りにしているだけに木材の切込みから手掛けてきたが最近はプレカット加工と併せて年間6棟程度の実績を積み上げている。周囲の景観にとけこむ木を基調にした内装、手づくりの調度品による演出、珪藻土の塗り壁、真壁工法、入念な断熱工事などを得意にしており、職人技が随所に生きる。売り込みのため営業マンの採用も一時期検討したが、コスト高になることから「職人集団が手掛ける家」を謳い文句に顧客に営業マンになってもらうことを決断。創業以来、ホンモノの家づくりに徹している。
正社員は、大工2人、左官2人、設備対応1人の5人に常用雇用の大工2人(65歳以上)を加えた7人体制。いずれも腕のよい職人で、同社の屋台骨を支えている。「職人がお客様との橋渡し役」と、いうようにいい繋ぎ役を果たし、職人同士だから分かり合えるいい関係を保持、スタッフのコミュニケーションも抜群だ。
「こんな家にしたい。だからこうして欲しい」。お客様の要望やニーズは、社長が直接聞き取り、職人の目線で的確に伝える。人数も少ないことから連携プレーもばっちりだ。社長自身、現場での施工監理を中心に活動してきただけに豊富な経験、持ち前の朗らかな人柄から職人の信頼も厚い。「派閥もなく、チームワークも最高」と、スタッフを称える目がやさしい。
まだ、これと言った経営理念は定まっていないが、心構えと経営理念は「感謝の心、付加価値を高める仕事、お客様の満足度の向上」に集約されている。経営理念は、じっくり時間をかけて浸透していくもので、「とにかくいい仕事をしていいものをつくることがベースになっている」と、異島社長。日本の伝統、建築技術にこだわり、高い技能を持った技術者がつくる質の高い家づくりが同社の究極の理念になっている。
作り手、住まい手側のニーズは、時代の変化とともに刻々と変化、比較的広い土地を確保できる田舎でもコンパクトな家を求めるなど多様化が進んでいる。「だからお客様の趣味、嗜好に合わせた家づくりが求められる。それでも生命・財産を守る堅牢な家は永遠の課題であり、工務店の責務。これをうまくかみ合わせることで、快適なこだわりの建築空間が生まれる」と、いい家づくりの持論を展開する。
「住む人の生活、趣味をしっかりサポートし、便利で楽しく面白い毎日、生活をデザインする会社であり続けたい」と、お客様目線のポリシーを重視する。創業以来、一貫して変わらない経営哲学となっている。