住まいの創造人
匠の技の職人集団を自負
自分を支えたのは他人に教えを乞う耳学問
㈱新山建築 代表取締役
新山 政和 氏
日置市立土橋中学校卒業後、大工として腕を磨きながら吹上高等職業訓練校建築大工科で学ぶ。日置地区で一番と言われた名匠に弟子入りして22歳で独立。趣味はホオジロの飼育、絵画など多彩。1級技能士、2級建築士、2級建築施工管理技士の資格所有。三男一女の6人家族。現在、祖母と妻の3人暮らし。日置市伊集院町土橋出身の68歳。
木に囲まれて穏やかに暮らす、まるで森の中に居るような家がコンセプト。木をふんだんに使い、昔ながらの技術で造り上げる木造住宅。子どもの頃から絵と工作が得意で、大きくなったら家を造る大工が夢だった。
頂いた名刺には、木の年輪をデザインしたシンプルなロゴマークと会社名「棟梁の家づくり」の文字。「棟梁はさまざまな職人を束ね、その弟子たちに技を伝える。職人が最高の技で競演する舞台が大工という現場。だから、親方の技を盗んで大工になる。いや、なったというのが正解かな」。大工の哲学を熱く語る。
中学校卒業と同時に15歳で日置地区では一番と言われた名匠・柿内実弘氏の下に弟子入り。22歳で独立した。職人は、自分のやり方を通す人が多い中で、「私は若い頃から他人の教えを乞うことが大好きだった。だから、いろいろな人の建てた家を見て回り、良いところがあれば取り入れる。その積み重ねで行き着いたのが今のスタイル」と、家づくりに携わることになったきっかけを語る。
新築の年間棟数は、3~4棟で、500万円程度のリフォーム、リノベは年間約3棟。「注文があっても絞り込み、こだわるからこれ以上は無理」と、言い切る。地区の長老や近所の人から聞いた言い伝えや、ためになる話など「知恵袋」「語録集」が行動するときの原点。「だから他人の教えを乞うことが大好き」ということらしい。いわば、多くの人から習った耳学問を誰よりも大切にする。聞いたことを現場で見て確認し、納得してから自分の技として取り込み、試作してトコトン自分のものにする。これこそが親方の技を盗む術(すべ)であり、大工になるということである。
「最近の家づくりは、ハウスメーカーが主流になりつつあり、モノを語れる人、中身について詳しく説明できる職人も減りつつある。時代のニーズに合わせて、その状況を判断しながら先を読むことが求められる時代。スピード、効率化が優先されがちな昨今、木にこだわり、昔ながらの家づくりを忘れてはならない」と、本物の職人が減ってきたことに警鐘を鳴らす。
台風、地震、水害など深刻な災害が全国各地で多発。地球環境問題が大きな社会問題として浮上しているが、「木造の家は、衝撃を受けながらも、その衝撃をしなやかに吸収して耐える力を持っている。まさに気候風土に耐える四季を感じられる素晴らしい特性がある。これからも強くて丈夫な家を造り、それを支え続けるためには、森や木を熟知した腕のいい職人が欠かせない。安心して暮らせる木の家を支えるのは職人の技」。
木にこだわる昔ながらの家づくり-が基本。その中で一つの工法として生まれたのが木造軸組み工法と一般的なログハウスの工法を組み合わせた「j-ログ工法」。2012年に県工業技術センターの協力の下、特許を取得した。これらの工法を駆使した、シェルターのある強い家。「いいモノはみんなに知ってもらいたい。決して独り占めせず、普及する一助になれば」と、先を見据える。
母も叔父も着物の仕立て、造園、竹細工などに携わっていた職人一家。昔の人は、腕が生きる術だった。長男の和樹さんは建具職人から大工に転向、三男の翔平さんは宮大工として修業、来年の春には帰ってくる。後継者の育成も堅実に進んでいる。
耳学問を誰よりも大切にする匠は、最後に「とにかく家づくりは楽しい」と、笑った。